どうも、バーチャルブロガーの燕谷古雅(つばめや こが)だ。
ついに始まったな。4月13日から10月13日まで約半年間にわたって開催される「大阪・関西万博」。この大きなイベントに合わせて、ソーシャルVRの世界でも、過去には大阪をモチーフにしたワールドが数多く登場していたんだ。
その中でも、特に異彩を放っていたのが、蕎麦屋タナベさん(@sobatang1)とリーチャ隊長(@rietzscha)が企画した「ファンタズム」シリーズの一作、「ファンタズムセブン」だ。万博と関係ありそうでなさそうな、そんな絶妙に外したテーマ設定と、ぶっとんだ情報量多さ。これはもう、シリーズの中でも最強最悪クラスといっても過言じゃないだろう。
今回は、VR空間上の大阪をモチーフにしたワールドの中でもめちゃくちゃ濃い一作、「ファンタズムセブン」を紹介していくぞ。
ちょうどこの4月には、シリーズ最新作である「万物のファンタズム2025 人生ノーコライダー」も完成予定だ。万博の熱気に乗って、ファンタズムの世界もますます加速していくはずだぞ!
仮想の大阪はいっぱいある
2021年、「メタバース」という言葉が広く知られるようになった頃、「大阪・関西万博」に先駆けて、大阪をモチーフとしたワールドが次第に増えはじめた。自治体もclusterやαU metaverseといったメタバースプラットフォームに参入し、スマートフォンさえあれば誰でも気軽にアクセスできるような環境が整いつつある。
一方、VRChatではユーザー有志による団体「VRChat関西部」が手がけた「バーチャル道頓堀」が常設ワールドとしてパブリックに公開されており、バーチャルマーケットでは「パラリアル大阪」が期間限定で登場するなど、大阪にちなんだワールド展開が相次いでいる。
いずれのワールドも個性的で、スタイルやアプローチの違いから、それぞれの特徴が見えてくる点も興味深い。大阪の魅力をバーチャル空間でどう表現しているのか、実際に訪れて確かめてみるのも面白いだろう。
パラリアル大阪
年に2回開催される大型イベント「バーチャルマーケット(HIKKY)」では、2022Summerと2024Summerに「パラリアル大阪」が登場している。「パラリアル」とは、実在する都市をモチーフに、バーチャルとリアルを融合させた都市シリーズのひとつである。
写真を見れば一目瞭然だが、2022年Summer版は煌めく”夜の大阪”、2024Summer版は活気あふれる”昼の大阪”と、それぞれ時間帯や雰囲気が明確に演出されている。特に2024Summer版では、「大阪・関西万博」を強く意識した要素が出ている。
注目すべきは、企業ブースのある専用のワールドで、多くが大阪と縁のある企業であること。まさに”スポンサーで構成された仮想の大阪”といった印象で、商業都市としての側面が色濃く反映されている。
ちなみに、道頓堀といえば飛び込みでお馴染みのスポットだが、パラリアル大阪内では飛び込むことはできない仕様となっている。おそらく、スポンサー企業や地域ブランドへの配慮が込められているのだろう。リアルとバーチャルの間で、慎重な線引きがなされている点も興味深い。
Vket2022Summer版


Vket2024Summer版


バーチャル道頓堀
「バーチャル道頓堀」は、関西を中心とした地方コミュニティ団体「VRChat関西部」が企画したワールドである。代表の柳通氏(@yanagi_tooru)が現地撮影を行い、ワールドクリエイターのIW氏(@vrc_iw)が制作を手がけた。現実の道頓堀の雰囲気をバーチャル空間で丁寧に再現しており、実際に現地に訪れたかのような没入感を味わえる。
著作権の配慮から、看板はなるべくパロディ要素を取り入れつつ、現実の景観に近いデザインとなっている。一部には実在する企業の看板も取り入れられており、そのリアリティが本物さながらの道頓堀の風景を演出しているのが特徴だ。
現実の道頓堀や「パラリアル大阪」と異なり、「バーチャル道頓堀」では飛び込み体験が可能である点もユニークだ。2023年、阪神タイガースのセリーグ優勝および日本一を祝して開催された飛び込みの集会では、SNSやメディアでも取り上げられ、大きな話題となった。
この出来事をきっかけに、「バーチャル道頓堀」は “メタバースの道頓堀”として一気に認知度を高め、今では関西カルチャーを象徴するVRChatワールドの一つとなっている。
関連記事
【VRChat】阪神日本一おめでとう!「バーチャル道頓堀でダイブしよう集会」レポート – ツバメヤロク – VRレビューブログ
バーチャル道頓堀(VRChat・PC専用)
https://vrchat.com/home/world/wrld_48042591-9c10-4df0-b66d-254db09fe6b0/info


clusterのバーチャル大阪
大阪市と大阪府が提供し、KDDI共同企業体と連携して開発された都市連動型メタバース「バーチャル大阪」。これは、大阪・関西万博に先駆けて、メタバースを通じて大阪の魅力を国内外に発信することを目的としている。
2023年には、大阪・関西万博の開幕までの日数を示すカウントダウンクロックが設置され、1970年の「大阪万博」と2025年の「大阪・関西万博」の映像を視聴できる機能がついている。
「バーチャル大阪」には、大阪城と道頓堀を融合させたエリアと、太陽の塔がそびえ立つエリアという2つのゾーンが用意されている。大阪の観光名所をバーチャルならではのかたちで再現した空間は、観るものを圧倒するスケール感と魅力にあふれている。
「バーチャル大阪」では行政によって提供されているワールドということもあり、道頓堀の戎橋から飛び込むと、注意を促す演出が入る。メタバースだからといって何でも許されるわけではないという、現実への配慮とマナー意識を促す仕掛けが込められているのだ。
clusterは、VRデバイスはもちろん、PCやスマートフォン(Android、iOS)にも対応しているため、デバイスを問わず気軽にアクセス可能だ。大阪・関西万博に向けた情報発信や、観光への関心を広げる場として、「バーチャル大阪」は今後も注目される存在であり続けるだろう。
バーチャル大阪_太陽の塔エリア(cluster)
https://cluster.mu/w/7c4e1876-feb4-49be-a7fb-16410bb6593c
バーチャル大阪_新市街エリア(cluster)
https://cluster.mu/w/bd2be64d-4450-48c6-9e85-34c7d0a124a6


ファンタズムセブンについて
2021年、メタバースという言葉が一般層に知られ、「大阪・関西万博」が話題になっていた頃。まさにそのタイミングで、VRChatにて異彩を放つ奇祭が幕を開けた。
その名も「ファンタズムセブン」。
「ファンタズムセブン」は、2021年11月1日に公開されたワールドである。前作「VR万物のファンタズム」をはるかに凌駕する圧倒的な「カオスさ」は、多くのユーザーに衝撃を与え、泣く子も思わず泣き叫ぶレベルのインパクトを持っている。
何このハッシュタグはwww
#オノッチ突進 pic.twitter.com/NzmyUYdN1S— オノッチ (@onotchi_) 2022年1月22日
その異様な世界観はテレビメディアでも取り上げられ、マツコ・デラックス氏が番組内でこのワールドを絶賛したことでも大きな話題を呼んだ。まさに”VRChat屈指の奇祭”の名にふさわしい、唯一無二の存在感を放つワールドである。

ワールドのスタート地点には、ひときわ目を引くバニラ求人を彷彿とさせるド派手な宣伝トラック、謎の「詫び石」4つ、そして「ファンタズムボタン」が配置されている。ボタンを押すと、瞬時に不思議な空間へ飛ばされる。


バタフライで泳ぐタナベさん
周りを見渡すと、真っ暗な空に、目に痛いほどのネオンサインが煌々と光輝く。都市を流れる川と思しき場所を進むと、そこは現実の大阪・道頓堀を思わせる街並み。珍妙な演歌のリズムに酔いしれるように奥へ進む。しかし、よく見るとタナベさんらしき人物がバタフライで泳いでいるのではないか。あの水質の川で泳ぐとは・・・これぞファンタズム。意味は、もちろんない。

戎橋の近くのグリコサインならぬタナベサイン。
戎橋には階段があり、その先には大阪・新世界を模したエリアが広がっている。2024年に解散したバンド「PHAZE」の「Mx. Black Box」が流れ始め、ファンタズムはここからかと思わせる。目の前には上下に激しく動く奇怪なこけしのようなオブジェクト、実在のフグ料理店「づぼらや」を連想される「ずぼら人間」と「新世界」の看板、奥には通天閣。そして通天閣までの道のりには、珍妙なオブジェクトが大量に配置されており、到達するには相当な体力と精神力が試される。さらに、奇天烈な行進曲が流れている宣伝トラックにぶつかるとスタート地点に強制送還(リスポーン)というトラップまで完備。

巨大ロボや荒ぶるように動きが激しい人物、転がる卵、そして異臭が溢れ出す大きなシュールストレミングの缶詰・・・。その混沌を抜けて辿り着いたのは、「謝罪イノベーションのVR」と掲げられていた通天閣だ。ここでもタナベさんの「謝罪」が強調され、通天閣にしゃちほこが乗っているなど、ミスマッチ感を表現しているようだ。さらに、松平健に似た人物が宙に浮き、大きな太陽のオブジェクトが場を圧倒する。まさに、これがファンタズムが描く「大阪」なのだ。

「大阪」と聞けば、お笑いと派手さを思い浮かべるが、このワールドをそれらを超えて、強烈な「カオス」が前面に押し出されている。多くのユーザー有志から提供された創作物を、製作者であるタナベさんが”適当に”配置した結果が、この唯一無二の空間である。
「ファンタズムシリーズ」は、3Dモデルや音楽、画像など、あらゆる創作を盛り上げるためのイベントであり、「大阪・関西万博」やメタバースブームを背景に「俺たちが作ったメタバース空間の万博」として誕生した。これは、参加者たちが自らの創作物をぶつけ合う、“表現で殴り合う”ような、珍妙かつ熱い奇祭であると言えるだろう。
万博のアンチテーゼ?

道頓堀エリアのスタート地点には、インパクト抜群の看板が立ち並ぶ。そのひとつには「中止だ!仮想万博」と、大胆に描かれた文字が目を引く。これは、アニメ映画『AKIRA』に登場する東京五輪の看板に「中止だ中止」と落書きされたシーンをインスパイアしたものだと考えられる。
この看板に書かれた「仮想万博」とは、おそらく大阪・関西万博のVR会場を指しているのだろう。しかし、深い意味が込められているというよりは、ファンタズムならではの”単なるジョーク”として描かれた可能性が高い。
実在のイベントや時事ネタを巧みに織り交ぜつつ、ユーモアと皮肉で彩られた演出。これこそが、ファンタズムシリーズの持つ強烈な個性であり、メタバース空間における「もう一つの世界観」を楽しめる理由なのだ。
このほかエリアがいっぱい
「ファンタズムセブン」では、大阪のエリアだけではなく、奇天烈な地下街や世紀末感あふれる荒れた学校、さらにはサカナクションのMVで見たことがあるような独特なセットまで、数えきれないほどのエリアが存在する。どこも一筋縄ではいかない構成で、すべて見て回ろうとすると、体力も精神力も容赦無く削られてしまうほど。
隠しエリアを探す楽しみもあるが、その分だけ消耗も激しいから、体力と気力に余裕があるタイミングでじっくり回ってみるのがオススメだ。「ファンタズムセブン」の真骨頂は、こうしたカオスで予測不能な空間にこそ詰まっている。
最後に
2021〜2022年にかけて巻き起こった「メタバース」ブームと、「大阪・関西万博」への注目。その流れのなかで、VR空間にはさまざまな「大阪」のワールドが生み出されてきた。そして、その背景に誕生したワールド「ファンタズムセブン」は、ファンタズムシリーズの中でも群を抜いて”最強最悪”のカオスぶりを誇る作品であると言っても過言ではない。
「ファンタズム」シリーズの特徴でもある情報量の多さは健在で、本作もその例外ではなく、ワールド内を見て回るには相当の体力と精神力が求められる。しかし、視点を少し変えて見れば、まるで”別次元の大阪”を観光しているような体験が味わえるのもまた、このワールドの魅力だ。
「大阪・関西万博」が話題を集める今、4月22日に開催される「万物のファンタズム2025 人生ノーコライダー」に向けて、改めて「ファンタズムセブン」を巡っておさらいしてみてはいかがだろうか。
ファンタズムセブン
ワールド製作者
tanabe
対応プラットフォーム
VRChat・PCのみ
ワールドURL
https://vrchat.com/home/world/wrld_794375c5-6b4f-4cbe-91d1-5e4cd71e86e2/info
解説
2021年11月1日公開。ファンタズムシリーズの2作目。これも大阪をモチーフとしたワールド。無造作に設置されたオブジェクトの量が凄まじく、今までの作品の中で最強最悪のカオスを誇る。

