【VR演劇】みんなの”VRChatの思い出”が舞台化 「バチャマガ×VR劇団ユアクト コラボ公演」レビュー

VRChatのエピソードが演劇化バチャマガ×ユアクトコラボ公演レビュー
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どうも、バーチャルブロガーの燕谷古雅(つばめや こが)だ。

君たちはVRChatでやっていて良かったことや、「これで人生が変わった!」と思えるような出来事に出会ったことはあるかい?

VRChatで体験した出来事の中で、嬉しかったことや面白かったことなら、きっと山ほどあるはずだ。

今回紹介するのは、「バーチャルライフマガジン×VR劇団ユアクト コラボ公演」だ。ユーザーから事前に募集したVRChatでのエピソードをもとに舞台化した、特別な演劇企画なんだよ。

VRChatを始めたばかりの頃の思い出や、長年のユーザーなら思わずニヤリとしてしまうあるあるネタ、やっていて良かったと感じた瞬間、さらにはバーチャルの中で「リアル」を感じた出来事まで、実に様々なエピソードが素敵な物語に生まれ変わっているんだ。しかも豪華な3本立てで、見応えバッチリの演劇に仕上がっているぞ!

というわけで今回は、バーチャルライフマガジンとVR劇団ユアクトのコラボ演劇を観劇したレビューをお届けしよう!

「バーチャルライフマガジン×VR劇団ユアクト コラボ公演」

Webメディア「バーチャルライフマガジン」が2025年末から2026年始にかけて行われた企画「教えて!あなたの経験談」の第1弾に続く、第2弾の企画である。

今回はVR劇団ユアクトとのコラボということもあり、ユーザーから寄せられたエピソードをもとに、VR演劇として公演する内容となっている。

募集テーマは、「VRChat始めたころの自分にひとこと」「VRChat老人会あるある」「VRChatやっててよかったと思ったこと」「VRChatで”リアル”を感じた瞬間」の4つ。これらのテーマに沿ったエピソードを、事前にユーザーから募集した。

そして、集まったエピソードをもとに、VR演劇ユアクトが演劇として再構成。公演は「もう一つの日常(リアル)」「米沢白狐伝」「また来週、この時間に」の3本立てによるオムニバス形式となっている。

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劇評:レビュー

VRChatでよくあること、出会えてよかったこと、始めたころの自分に伝えたいこと、そして現実を感じた瞬間ーー。さまざまなエピソードを集め、それをVR演劇として舞台化する。VR演劇の中でも新しい挑戦であり、コラボならではの特別感がある企画だ。

そこで今回は、「バーチャルライフマガジン×VR劇団ユアクト」コラボ演劇で上演された3作品のレビューをお届けする。

もう一つの日常(リアル)

私はもともと口下手で、人と話す時にうまく言葉が出ず、冷や汗をかいたこともなん度もあった。この作品の主人公にも、どこか似たところがある。

主人公はコミュニケーションが苦手で、営業にも悩みを抱えている。その克服を目指してVRChatを始めた、という流れに見えた。

個人的に驚いたのが、「イベント推しえ合おう交流会(以下、イベ推)」のシーンを作品内に落とし込んでいる点だ。実在するイベントを物語の中に取り入れることで、VRChatらしい空気感がかなり強く出ている。

Visitorの状態で「イベ推」の会場までたどり着き、イベントを探しているうちにキャストになるという流れは、かなり珍しいケースではないだろうか。とはいえ、苦手なコミュニケーションを克服するためにイベントスタッフやキャストとして活動する、いう話自体はVRChatではそれほど珍しくないようにも感じる。

イベントでの活動シーンもなかなか興味深かった。アバターの力を借りて役になりきる人や、性別にとらわれず自分の好みを詰め込んだアバターを作るクリエイターなど、個性豊かなキャストが登場する。

現実では人と話すだけで緊張してしまうのに、アバターを通すと自然に話しやすくなる。こうした感覚も、VRChatではよくあることだろう。

しかし、初心者らしい振る舞いや話し方が裏目に出て、フレンドの正体が会社の同僚や上司だったと分かる展開に驚かされた。まさに「もう一つの日常」が、そのまま「リアル」とつながってしまうオチである。

もし同じ会社にVRChatユーザーが2人以上いて、しかも互いに正体を知らないまま交流していたとしたら、かなり気まずい。もし自分だったら、心の中で「これは何とかならないか・・・」と困ってしまいそうだ。

米沢白狐伝

最初は、VRChatでのエピソードとあまり関係がなく、企画の趣旨から少し外れた作品なのではないかと気になった。

しかし、バーチャルライフマガジンの座談会の記事を読むと、2018年に公開されたVRChat向け3Dモデルアバター「右近」の名前が、山形に伝わる白狐伝説に由来していることが分かった。さらにエピソードを投稿したユーザーが、実際に松が岬公園の福徳稲荷を訪れたという話も紹介されていた。

地元の魅力を再発見すること、元ネタとなった場所へ聖地巡礼に行くこと、アバターと同じ名前の商品を買うことーー。こうした体験は、どれも「VRChatで”リアル”を感じた瞬間」に当てはまる。その中でも、「アバターの魅力に惹かれ、現実の場所へ足を運ぶ」というエピソードが演劇として選ばれたのだと納得した。

「山形の白狐伝説をVR演劇として再構成する」という発想もシンプルで分かりやすい。白狐の右近をそのまま主役として起用し、「アバターそのものに物語を与える」という見せ方になっているのが印象的だった。

序盤では、フレンドと酒を飲みながら景観系ワールドで駄弁る場面から始まる。リアルコライダー(VR中に現実の身の回りにある物へぶつかってしまうこと)といった、VRChatではよくあるネタも交えつつ、そこから本編へ切り替わっていく流れもバランスが良い。

終盤で特に印象に残ったのは、息絶えた白狐を二人がかりで抱えるシーンだ。「アバターを持つ」というギミックまで仕込まれており、演出の細かさにも驚かされた。

「VRChat向けアバターを主役にしたVR演劇」でありながら、VRChatの文化や体験を取り入れて白狐伝説を再構成している。いわば”VR演劇版・白狐伝説”ともいえる、新鮮かつ挑戦的な作品だった。

また来週、この時間に

「リアルで成し得なかったことを、VRChatに入って取り戻す」というテーマが色濃く現れた物語だった。

物語は、家族の影響でラジオ番組にハマり、趣味が高じて自分でもラジオ企画を立ち上げるようになった主人公が、ラジオパーソナリティーを目指して就職活動するところから始まる。しかし、その夢が叶わなかった。

その後、VRChatで偶然ラジオ番組を見つけたことをきっかけに、自らラジオパーソナリティーとして活動を始める。まさに、「VRChat始めたころの自分にひとこと」というテーマに沿ったサクセスストーリーである。

冒頭で、聞き覚えのある名前がいきなり出てきたときは、思わずニヤけてしまった。VRChatのラジオ番組を普段から聴いている人なら、「ああ、分かる」と感じる部分も多いのではないだろうか。

ラジオパーソナリティーとしての振る舞いも印象的だった。どこか実在の誰かを彷彿とさせる仕草や話し方から、普段からラジオ番組をよく聴き、そこで培ったトークの感覚を自分なりに身につけていることがうかがえる。

ただし、終盤では自分語りに全振りした結果、進行がやや雑になるというオチがついている。このあたりも、妙にリアルで面白い。

リアルで成し得なかったことを、VRChatでスキルを身につけることで取り戻し、それを現実へ還元する人もいる。逆に、現実で培った技術や経験を、VRChatで活かす人もいる。

そう考えると、VRChatをきっかけに人生が変わった人がいるということを、あらためて実感させられる演劇だった。

最後に:総評

「人のエピソードを物語に落とし込む」という手法は、創作でよく見られるものだ。VRChatユーザーの体験をもとに舞台化する作品もあり、「壁、ホットコーラと」のように、VR空間で分かり合えなかった経験を物語として描いた作品もその一つだろう。

今回の「バーチャルライフマガジン×VR劇団ユアクト」コラボ演劇では、複数のユーザーのエピソードをもとに、3本の演劇作品へ落とし込むという形式は珍しく、新鮮さがあった。

1本目は「VRChatあるある」、2本目は「アバターの魅力を引き立てるVR演劇」、3本目は「VRChatのサクセスストーリー」と、それぞれ方向性が異なる。オムニバス形式で、約2時間30分というボリュームもあり、かなり見応えのある特別な公演だった。

VRユーザーには強く刺さる一方で、外から見るとやや内輪寄りに映る部分もあるかもしれない。しかし、だからこそ、VRChatの中で生まれた文化や体験を、演劇という形を通して外へ届ける新しい取り組みとして面白い。

VRChatでしか生まれにくい物語を、VR演劇としてどう見せていくのか。その可能性を感じさせる企画だった。

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